核医学検査学:PET
PET装置について
この記事の目次
PET装置
装置の種類と概論
PET(Positron Emission Tomography、ポジトロン断層撮影法)は、医療分野で広く利用される画像診断技術の一つであり、体内の代謝活動や生理機能を非侵襲的に観察することができるため、がんや脳疾患の診断、治療効果の評価において重要な役割を果たしている。
PET装置のシンチレータについて
シンチレータは放射線を吸収してそのエネルギーを光として放出する物質であり、この光はフォトマルチプライヤー管(PMT)や半導体検出器で検出され電気信号に変換されます。シンチレータの性能はPET装置の画像品質に直結するため、その選択は非常に重要になる。
シンチレータの種類
- BGO:無機シンチレータの一つ。
- 特性:高い吸収係数を持ち、高エネルギーのガンマ線を効率的に吸収する。
- 利点:高い密度と原子番号により、高感度の検出が可能。
- 欠点:発光速度が遅いため、高速の検出が必要な場合には適さない。
- LSO:BGOより優れた相対発光量を有する。
- 特性:高い発光効率と高速応答を兼ね備えている。
- 利点:高いエネルギー分解能と短い崩壊時間により、高精度な画像が得られる。
- 欠点:コストが高く、製造が難しい。
- GSO
- 特性:中程度の発光効率と高速応答を持ちます。
- 利点:BGOよりも高速で、LSOよりも安価です。
- 欠点:エネルギー分解能がやや低い。
- NaI(Tl):無機シンチレータの一つ。
- 特性:非常に高い発光効率を持ち、広範な用途に使用されている。
- 。点:コストが低く、製造が容易。
- 欠点:発光速度が遅く、PET装置にはあまり適していない。潮解性がある。
検出器特性
- シンチレータ中で発光している光の減衰時間が短い検出器は最大計数率が高い。
- 検出器素子が小さいほど空間分解能は高い。
- 検出器が視野中心から遠いほど空間分解能は低下する。
- リング径が大きくなると角度動揺という現象により空間分解能は低下する。
- 視野中心と比較して端の空間分解能は低下する。
動作原理とデータ収集
PET装置の動作原理は、放射性同位元素の崩壊によって放出されるポジトロンが、電子と衝突して二つの消滅放射線が生成される。この消滅放射線は511Kevのエネルギーを持ち、核種によらず一定である。また、180度の方向に飛び出すため、同時計数回路により体内からのガンマ線発生位置を特定することができる。そのため、SPECTのようにコリメータを使用しない。
データ収集の種類
- 2D収集
セプタという体軸方向のコリメータを使用し、同時計数を一つのリング間のみで断層像を得る方法。感度は低いが定量性に優れた収集方法である。 - 3Ⅾ収集
セプタを使用せずに複数のリングで同時計数を行うことで断層像を得る方法。2D収集と異なりセプタを使用しないため感度は向上する。
画像再構成
- 2D収集:FBP・ML‐EM法やOS‐EM法などの逐次近似法
- 3Ⅾ収集:3Dフーリエ変換法・逆投影法
補正法
- プランクスキャン:外部線源を用いて減衰量を計測し、補正係数を算出する方法。
- トランスミッションスキャン:外部線源やCTデータを用いて体内の減衰マップを作成し、これを基に補正を行う方法。
- 散乱同時係数補正:ガンマ線収集の際に偶然無関係の方向からの放射線が計測された場合に行われる補正法。
同時係数
- 真の同時計数:一つの消滅光子が二つの検出器で計測された場合の同時計数。この計数率は放射能に比例する。
- 偶発同時計数:二つの消滅光子が同時に検出器で計測された場合の同時計数。この計数率は放射能の2乗に比例する。また、偶発同時計数に対する補正法としてシングル計数法と遅延同時計数回路法などが挙げられる。
- 散乱同時計数:相互作用によるガンマ線の湾曲による同時計数。
性能評価項目一覧
- 計数率特性
- 絶対感度
- 空間分解能
- 画像濃度均一性
- 減弱・散乱補正精度
- 画像位置合わせ精度
- 計数損失および偶発同時計数補正精度
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