核医学検査学:SPECT
SPECT装置について
この記事の目次
装置の概要と種類
SPECTとPETの比較
- PET装置は511keVの高エネルギー消滅放射線を使用しているのに対して低ガンマ線エネルギーを使用しているため、検査室遮蔽が簡易である。
- SPECTは異なる核種による2核種同時収集が可能である。一方PETでは核種が異なっても同一の511keVの消滅放射線が放出されるため、核種を分別できない。
- SPECTの空間分解能は15~20㎜なのに対して、PETは3~5㎜とPETのほうが空間分解能が優れている。
原理
- 収集機構
空間的ボケを抑えるために、被写体とガンマカメラを可能な限り近づける。近接軌道や楕円軌道などを行うことで円軌道よりも空間分解能を高くして撮影をすることができる。 - 収集角度
基本的に360度収集が行われる。サンプリング角度は5~6度であり、この最適なサンプリング角度は画素サイズで決定され、以下の関係式で表される。
$S≧$$\frac{πD}{2a}$ S=投影データ数 πD=回転軌道の長さ a=画素サイズ - マトリクスサイズ
最適なマトリクスサイズはシステム分解能の半値幅(FWHM)の$\frac{1}{3}$から$\frac{1}{4}$である。またマトリクスサイズが小さくなると、空間分解能は高くなるが、SN比とコントラストは低下する。 - データ収集の種類
連続法
カメラの回転を止めずに収集を行う。利点はカメラ移動によるタイムラグが少ない。欠点は投影データ枚数が少ないと回転によるボケを含んでしまう。
断続法
収集方向ごとに回転をストップさせて1フレームを収集して次の収集方向へ移動する。
アーチファクト
- 検出器に起因するアーチファクト
- シンチレータの破損
破損箇所に欠損像画みられる。シンチレータの破損は室温の急激な変化や交換時の衝撃で起こる可能性がある。 - 光電子増倍管の調整不足、破損
破損箇所に欠損像画みられる。主にゲイン調節不足や破損が原因で欠損を生じる。なので定期的な保守点検が必要。 - 均一性の劣化
均一性が劣化すると、その箇所に欠損像を生じる。心筋シンチグラフィのような画像では劣化箇所にカウントの低下がみられる。均一性の劣化はNaI(Tl)などのシンチレータ位置計算回路のバラツキなどに起因し、視野が不一致になる。なので均一性の保守点検が必要。また、視野の不均一は収集カウントの低下によっても生じ、それによりリングアーチファクトが生じる可能性がる。 - 回転中芯ズレ
軸ズレ(offset)が大きくなるほど欠損が大きくなる。これはリングアーチファクトも原因にもなる。 - リング状アーチファクト
SPECT装置におけるリングアーチファクトの主な原因として均一性・回転中芯ズレ・空間直線性の調節不備が挙げられる。 - エネルギー設定不良
- コリメータに起因するアーチファクト
- コリメータのキズや破損
コリメータの傷に一致してフラット像に欠損像が見られる。 - コリメータの選択ミス
低エネルギー用コリメータで高いエネルギーをコリメーションすると、隔壁通貨(ベネトレーション)による画質の低下がある。
- 被検体によるアーチファクト
- モーションアーチファクト
- 減弱によるアーチファクト
被検体において放出される放射線は被検体との相互作用により減弱を受ける。これによりカメラに届く光子は減弱する。SPECTでは体内深部へ行くほど、また放射線のエネルギーが低いほど顕著になる。 - 周囲の異常集積による散乱線の影響
撮影範囲外に放射線源は存在すると、散乱線等の影響により画像中の放射能分布が不正確になり、濃度ひずみやコントラスト分解能が低下し画像の劣化を招く。 - 目的臓器外によるアーチファクト
目的臓器以外の高集積画像中に存在すると、実際の高集積部位より大きく抽出され正確な抽出が困難となる。これによる高集積はSPECT像においてストリークアーチファクトの原因となる。センチネルリンパ節・骨シンチで見られる。
- 収集や処理によるアーチファクト
- スターアーチファクト
特にセンチネルリンパ節シンチなどで認められる。強い集積・高エネルギーガンマ線を使用すると、コリメータの隔離を貫通した光子により周囲6方向に放射状のアーチファクトが認められる。 - トランケーションエラー
被検体の一部が有効視野外から外れた場合に生じるアーチファクトで、視野外にはみ出した部分付近にカウントが集中しているような画像になる。SPECTCTではトランスミッションであるCTのFOVがエミッションに比べて小さいため、視野外に出た部分においてはトランケーションエラーが発生し補正を不正確にする。 - ストリークアーチファクト
FBPを利用した再構成で生じるSPECT特有のアーチファクトで再構成断面内に線を引いたような画像になる。画像再構成時にOS―EMなどの逐次近似法を用いると抑制できる。
画像再構成法
- フィルタ補正逆投影法(FBP)
- Ramp filter:最も単純な再構成フィルターで高周波雑音が多い。
- Sheep Logan filter:高周波数成分減衰フィルターで最も使用される。
- Ramaghandran filter:高周波成分を増強し、画像を先鋭化させることでボケを補正する。
- 逐次近似法
- ML‐EM法:定量性を底上げする方法。
- OS‐EM法:ML‐EM法と比較して再構成時間が短く、アーチファクトを低減できる。
各種補正法
- 減衰補正
- Chang:再構成画像に近似的な吸収補正を行う。後補正法と呼ばれる。
- Sorenson:プロジェクション画像に近似的な吸収補正(減弱補正)を行う。前補正法と呼ばれる。
- 散乱線補正
コンプトン散乱を除去するのが目的で、画像収集時にエネルギーウィンドウを2~3個設定する。
- TEW法:再構成前に補正する方法で、投影データを同時に3種類収集。
性能評価
- 総合均一性:線源は99ⅿTcの円柱状線源を使用。
- 総合空間分解能:SPECT再構成後の総合空間分解能測定には散乱体の有無で評価する。
- 散乱体あり
使用線源は99ⅿTcと57Coを使用した線状線源で、FWHMFWTMの計算はそれぞれの線状線源のXY方向について放射線近似法によって求める。 - 散乱体なし
使用線源は99ⅿTcと57Coを使用した点線源で、FWHMFWTMの計算は9つの点状像のXY方向について放射線近似法によって求める。 - 解析方法:ランプフィルターによる逆投影法
- 回転中芯ズレ:サイノグラムによって評価
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カテゴリ:PET
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