核医学検査学:シンチグラフィ
心筋血流シンチグラフィ
この記事の目次
心筋血流シンチグラフィ(非観血的検査)
検査要点
- 心筋の血流分布を非観血的に観測できる検査法である。
- 局所心筋の血流が心筋へのトレーナー集積分布によって表されるため、冠動脈病変による血流低下部はトレーサ集積低下領域として表示される。
- 心臓に負荷をかけた状態での画像が得られるため、心筋虚血の診断にも有用であり、経皮的冠動脈形成術(PCI)の決定やその効果判定にも用いられる。
薬品の特徴
201TⅼCⅼと99mTc標識製剤の2種が利用される。
- 201TⅼCⅼ
- 全身の筋肉に分布するが筋活動の活発な心筋に多く分布し、虚血などの障割部位には分布しない。
- 初回冠動脈通過が70%ほどで、心筋では約5分でピークに達し、その後緩やかに減少する。これらのような洗い出しが存在するため虚血部位が再分布を起こす。負荷検査の場合1回の投与で負荷・再分布イメージの2つを得る。
- K⁺と同様にATPナトリウムポンプを介し能動輸送される。
- 半減期:73時間
- 主エネルギー:71・167Kev
- 壊変形式:EC壊変
- 集積機序:能動輸送
- 洗い出し:有り
- 心筋摂取率:3~5%
- 99mTc標識製剤
- MIBI・TFは投与後速やかに受動拡散によって心筋に取り込まれる。
- 集積機序に関しては心筋のミトコンドリアの膜電位や心筋細胞膜の機能が関与していると考えられる。(高濃度→低濃度へと自発的に移動する)。また、201TⅼCⅼと同様に冠血流に比例して心筋へ集積する。
- 201TⅼCⅼよりエネルギーが高く半減期も短いため大量投与ができ、SPECT検査に適している。
- 肝臓及び脾臓に強い集積がみられるため心筋像はこれらが消失してから行う必要がある。
- 半減期:6時間
- 主エネルギー:140Kev
- 壊変形式:Tl壊変
- 集積機序:受動拡散
- 洗い出し:無し
- 心筋摂取率:1~2%
前処理
- 201TⅼCⅼは肝・胃の集積が心筋への散乱線として影響するので、それを抑えるため絶食状態での検査が望ましい。
- 99mTc心筋製剤(MIBI・TF)では胆管系の排泄を促すため、201TⅼCⅼとは反対に投与後食事や牛乳などを摂取する。
検査プロトコル
大別して安静時と負荷時に分けられる。
- 201TⅼCⅼ
- 安静時:15分待機してから撮像できる。
- 負荷時:投与後直後から撮像できる。
- 99mTc標識製剤
- 撮像開始までの洗い出しがほとんど見られないため時間的制約を受けないが、安静時・負荷時に関わらず60分待機してから撮像する。
収集方法
- プラナー像の収集
できるだけ唾液腺・甲状腺も含めて肺野全体が視野内に入るようにし、心筋画像の障害となる肝臓・胃は含まれないようにする。 - SPECT像の収集・処理の流れ
できる限り心筋撮影の障害となる両腕は挙上し、体動は十分心がける。ポジショニング時にカメラ視野の中心を患者体部のセンターを合わし、心臓をカメラの中央に設定しない。
- 処理の流れ
- 投影データ収集
- 前処理フィルター(ButterWorth・Hamming)
- 吸収補正・散乱補正(TEW法・WSW法)
- 画像再構成(FBP・逐次近似法)
- 軸設定(長軸像・短軸像・水平断像)
- SPECT画像・定量画像(Bullseye)出力
負荷方法
- 運動負荷
心電図と血圧をモニタしながらランニングマシン等で負荷をかける。目標心拍数に達するか、胸痛の自覚症状、心電図のSTが変化した時点でRIを静注する。 - 薬剤負荷
冠血管拡張のための負荷薬剤としてアデノシンを投与する。アデノシン投与後から3分後に別でルートをとりRIを投与する。
解析方法
- Washout Rate
心筋からの洗い出しは201Tⅼの特徴であり、虚血の診断に特有である。正常値は50%前後で、40%以下を病変と疑う。 - 二次定量解析
- Bullseye表示の事。多数枝の左室心筋のSPECT短軸断層像を原画像として作成する。
- 心尖部の断面を円中央に配置し、外側に同円心状に短軸断層像を順に並べ、最外側に心基部断面を配置。
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