放射線治療機器:がん治療学
放射線治療学
この記事の目次
放射線治療の目的
放射線治療は手術、薬物療法と並ぶがん治療の3本柱の一つです。
放射線治療は低侵襲な治療なので、機能や形態を温存できるため患者さんの生活の質(QOL)を保ちやすいという特徴があります。
放射線治療を行う目的は主に3つあります。
- 根治治療
治癒を目指して行われます。 - 姑息治療
がんによる症状を緩和したり、時には延命を目的として行われます。 - 予防照射
再発、転移のリスクが高いときに行われます。
緊急照射
緊急照射の適応として以下の3つがあります。
-
上大静脈症候群(SVC)
腫瘍により上大静脈が圧迫されることによって、様々な症状がでてくる病態です。 -
脊髄圧迫
脊椎や脊髄にできた腫瘍が脊髄を圧迫し、神経障害を起こすのを防ぐために行います。 -
気道閉塞
気道内や、気道周辺にできた腫瘍によって気道が閉塞されるのを防ぐために行います。
臓器、組織の耐容線量
放射線治療を行うにあたって臓器や組織の耐容線量を考慮する必要があります。
以下に許容される線量を示します。
<20Gy | 肺、水晶体、卵巣、骨髄、精巣 |
20~30Gy | 肝臓、腎臓 |
~40Gy | 小腸、耳下腺 |
~50Gy | 胃、筋肉、心臓、視神経、視交叉、 脊髄、脳、網膜、甲状腺、結腸 |
~55Gy | 皮膚、食道、大腿骨頭 |
~65Gy | 直腸、膀胱 |
放射線治療体積
- GTV
肉眼で判別できる体積 - CTV
微視的に腫瘍が存在すると考えられる体積 - ITV
CTVに対して体内臓器の動き(IM)などを加味した体積 - PTV
ITVに対して患者の動きや、セットアップの不確かさを補償するためのマージン(SM)を加えた体積 - TV
PTVに照射技術を加味したマージンを設定した体積 - IV
正常組織の耐容にとって有意だると考えられる線量が照射される体積
体積は GTV<CTV<ITV<PTV<TV<IV の順に大きくなります。
時間的線量配分方法
放射線が照射されたあと、時間経過とともにある程度回復します。
それによって、投与された総線量が同じでも時間的な線量配分で生物学的効果が異なってきます。
また、通常の外照射で使用されている線量率ではほとんど影響がないが、線量率が低すぎると照射中に回復して生物学的効果が変わってきます。
時間的な影響のある因子として、治療期間、分割線量、線量率などがあります。
分割照射方法とその特徴をまとめました。
分割照射方法 | 1回線量 | 内容 |
---|---|---|
通常分割照射 | 1.8~2,0程度 | 通常の照射 |
過分割照射 | かなり少ない | 1回の線量を下げて1日2回照射する。 |
加速過分割照射 | 少ない | 1回の線量を下げて1日2回照射する。 |
寡分割照射 | 多い | 治療回数、総線量を下げて1回線量を増やす。 |
奏効率
治療によってがん細胞が縮小または、消滅した患者さんの割合をあらわしたもので、下記式により計算されますす。
奏効率=(CR+PR)×全症例数×100
治療効果の判定を行うときに用いられます。
CR | 病変が100%縮小し、4週間以上経過。 |
PR | 50%縮小し、4週間以上経過 |
SD | 縮小率が30%未満、または20%以内の増大で二次的病変が増悪せず、 新規病変の出現がない状態で4週間以上経過。 |
PD | 最も縮小した状態から、25%以上の増大または、新規病変の出現。 |
被ばくの影響分類
被ばくの影響分類には確定的影響と確立的影響があります。
確定的影響にはしきい値があるが、確率的影響にはしきい値がなく、急性障害と晩発障害に分類できます。
急性反応と晩発性反応の例をまとめました。
急性反応 |
晩発性反応 |
---|---|
治療中に出現するもの | 治療後数か月以降で出現するもの |
一時的で回復可能 | 非可逆的て回復困難 |
粘膜炎、発赤、紅斑、食道炎、嚥下困難、 肺炎、吐き気、嘔吐、食欲不振、下痢、 便秘、腹痛、宿酔、白血球減少 |
肺線維症、白内障、放射線脊髄炎、 潰瘍、出血、穿孔、狭窄、 |
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