放射線治療機器:照射術式
照射方法
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照射方法
同じ疾患でも、照射の方法は治療医の考え方や治療方針によって異なるため、照射方法が異なる場合があります。
X線やγ線では照射門数が増えれば増えるほど高線量の集約性が増す一方で、低線量域が広がります。
照射方法 | 特徴 | 例 |
---|---|---|
1門照射 | 表在病変に有効で、表面線量を上げるためにボーラスを用いることがあります。 | 電子線で行うケロイドや、乳がんのboostなど |
直交2門照射 | 対向する2つの照射野で照射する方法です。 | 早期喉頭や子宮頸がんの中央遮蔽など。 |
対向2門照射 | 表在に近い病変に対してウェッジフィルタを用いて直交する照射野で照射する方法です。 | |
接線照射 | 標的が体表に広く分布し、深部に線量が必要でない場合に行います。 | 乳がん、肋骨転移など |
多門照射 | 3門以上で照射し、門数が多いほど線量の集約性が高くなります。 | |
回転照射 | 標的を中心に回転させながら照射する方法です。 | 下垂体腫瘍など |
振子照射 | 回転照射の一部の角度を往復して照射する方法です。 | |
原体照射 | 固定多門や回転照射でMLCを用いて標的の形に合わせて照射野を形成する方法です。 | 脳転移など |
Field In Field法
高線量域が出現した際にMLCなどを用いて高線量域をカットした照射野を追加することにより、高線量域を抑えることができ線量の均一性を高めることができます。
定位放射線照射
病変に対して多方向から線量を集中的に照射させる方法です。
リニアックやガンマナイフによる定位手術的照射(SRS)や定位放射線治療SRTがあります。
極小の照射野で線量を集中させるため、照射中心の固定精度を1mm以内にする必要があります。
脳動静脈奇形(AVM)やオリゴメタによる脳転移や脊椎転移に対して行われます。
- 定位手術的照射(Stereotactic Radiation Surgery : SRS)
分割回数は一回で、特殊フレームでピン固定する場合があります。 - 定位放射線治療(Stereotactic Radiation Therapy : SRT)
数回に分割して照射します。
基本的には着脱可能な固定具を用いて治療します。
強度変調放射線治療(Intensity Modulated Radiation Therapy : IMRT)
MLCなどを用いて不均一な放射線強度を持つ照射ビームを多方向から照射する方法です。
リスク臓器の障害を抑えつつ、標的に対して従来より高い線量を投与でき、最適な線量分布を得ることができます。
逆方向治療計画(インバースプラン)でプラン作成を行います。
頭頸部や骨盤部などさまざまな部位の照射に用いられます。
強度変調回転照射法(Volumetric Modulated Arc Therapy : VMAT)
IMRTをガントリ回転させながら行う照射方法です。
治療時間の短縮や、より良い線量分布を得られる場合もあります。
全身照射(Total Body Irradiation : TBI)
骨髄移植に先立って全身のがん細胞を根絶し、宿主の免疫力を低下させる目的の照射方法です。
水晶体や肺の線量を下げるために、鉛ブロックで遮蔽する場合があります。
照射野の大きさには限りがあるため全身を照射するためには工夫が必要で、いくつかの照射方法があります。
照射方法としては以下のものがあります。
- Long SSD
距離を伸ばして全身が照射野に含まれるようにして照射する。 - 線源移動法
線源を移動させて全身を照射する。 - 寝台移動法
寝台を移動させて全身を照射する。
画像誘導放射線治療(Image Guided Radiation Therapy : IGRT)
治療計画時のCTと治療時の位置を照合し、精度を向上させるシステムのことです。
照合には超音波やMRI、CBCT、MVCT、2方向のX線画像などが用いられます。
FFFビーム(Flattening Filter Free beam)
主に1回線量の大きい定位照射などに利用されます。
治療装置ヘッドにあるフラットニングフィルタを使用せずに照射するビームです。
線束の平坦性がなくなりますが、高線量率の照射が可能となり、治療時間を短縮することができます。
画像誘導小線源治療(Image Guided Brachytheraphy:IGBT)
従来から正面側面の2方向撮影で治療計画が行われて来ました。
これに対し、CTやMRI画像を用いて
3次元治療計画を行うのが画像誘導小線源治療(IGBT)です。
X線画像では得られない腫瘍と周囲の正常臓器に照射される線量を把握することができます。
線量の調整が可能となり、治療成績の向上や有害反応の軽減が期待できます。
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