放射線生物学:放射線の影響
人体レベルの影響
この記事の目次
全身被ばくによる影響の閾値
影響 | 組織 | 発現時間 | 閾値(Gy) |
---|---|---|---|
一時的不妊 | 精巣 | 3~9週間 | ~0.1 |
永久不妊 | 精巣 | 3週間 | ~6 |
卵巣 | <1週間 | ~3 | |
造血機能低下 | 骨髄 | 3~7日 | ~0.5 |
発赤 | 皮膚 | 1~4週間 | 3~6 |
火傷 | 皮膚 | 2~3週間 | 5~10 |
一時的脱毛 | 皮膚 | 2~3週間 | ~4 |
白内障 | 眼 | 数年 | ~1.5 |
各組織への影響
・血液細胞の寿命(被ばく後)
リンパ球 < 顆粒球 < 栓球 < 赤血球
リンパ球 → 数時間~
顆粒球 → 数日~
栓球 → 10日
赤血球 → 4か月
・消化管への影響
クリプトの減少 → 10Gy以上の被曝で起こる
数~10Gyの被ばく後14日くらいまでに腸管死が起こる
腹部への1Gyの被ばく → 吐気や食欲不振(宿酔)
・皮膚障害
被ばく線量 | 時間 | 影響 |
---|---|---|
3~4Gy | 被ばく3週間後 | 一過性の脱毛、紅斑 |
6~19Gy | 持続的 | 紅斑、腫脹 |
20Gy以上 | 被ばく1か月後 | 水疱、びらん、潰瘍 |
・水晶体障害
被ばく線量 | 影響 |
---|---|
0.5Gy | 水晶体の白濁 |
1.5Gy | 視力障害 |
・大線量被ばくによる死
影響 | 時間 | 被ばく線量 |
---|---|---|
骨髄死 | 60日で半数死亡 | 4Gy |
腸管死 | 10~14日 | 10Gy |
中枢神経死 | 数日以内 | 数十~100Gy |
発がん影響
○相対リスクと絶対リスク
・相対リスク
自然発生率に対する被ばく集団の発生率 → 高年齢で高リスク
・過剰相対リスク
相対リスクから1引いたもの → 被ばくによる発生率の増加分
・絶対リスク
一定期間での単位線量あたりの発生数 → 年齢に関係ない
・過剰絶対リスク
被ばく集団の絶対リスクから、非被ばく集団の絶対リスクを引いたもの
・白血病
→ 2,3年で発生し始め、7,8年がピーク
→ LQモデルに適合
→ 相対リスクは固形がんより高い
・固形がん
→ 10年以上の潜伏期
→ Lモデルに適合
内部被ばく
核種 | 臓器 | 発がん |
---|---|---|
³²P | 骨、骨髄 | 骨肉腫、白血病 |
⁴⁰K | 全身 | |
⁵⁹F | 脾臓 | |
⁹⁰Sr | 骨 | 骨肉腫 |
¹³¹I | 甲状腺 | 甲状腺癌 |
¹³⁷Cs | 筋肉、全身 | |
²⁰³Hg | 腎臓 | |
²²²Rn | 肺 | 肺癌 |
²²⁶Ra | 骨、骨髄 | 骨肉腫、白血病 |
²³²Th | 肝臓、骨髄 | 肝癌、白血病 |
²³⁹Pu | 骨 | 骨肉腫 |
胎児・小児被ばく
・妊娠期間と被ばく
- 着床前期 → 受精~8日
- 器官形成期 → 胎齢2~8週
- 胎児期 → 胎齢9週~出生
流産、奇形 閾値は 0.1Gy
精神遅滞 閾値は 0.3Gy
→ 胎児期被ばくについて0.1Gy以下の被ばくでは確定的影響を心配しなくてよい
次のレッスンへ
カテゴリ:放射線の影響
生物学的効果と放射線治療
前のレッスンへ
カテゴリ:放射線の影響
細胞レベルの影響