放射線生物学:放射線の影響
生物学的効果と放射線治療
この記事の目次
治療可能比
治療可能比(TR)=
正常組織耐容線量腫瘍致死線量
- 高感受性腫瘍 → TR > 1
ウィルムス腫瘍、未分化胚腫瘍、悪性リンパ腫など - 中感受性腫瘍 → TR ≧ 1
消化管の腺癌など - 低感受性腫瘍 → TR < 1
骨肉腫、悪性骨肉腫など
TNM分類
腫瘍の病期分類の表しかた
- T (Tumor)
原発巣の進展度 (T1~T4) - N (Nodes)
所属リンパ節への転移 (N0~N2) - M (Metastasis)
遠隔転移の有無 (M0~M1)
線量率効果と逆線量率効果
・線量率効果
一度に大量の放射線を浴びるよりは、低線量で長い間少しずつ放射線を浴びた方が生物学的影響も少しずつ徐々に現れてくること
→ 低LET放射線に当てはまる
・逆線量率効果
低線量で長い間少しずつ放射線を浴びたほうが生物学的影響が大きくなること
→ 高LET放射線に当てはまる
細胞周期と放射線感受性
・G₂ブロック
細胞が放射線を浴びるとDNAが損傷され、細胞自身が危険を察知し、G₂期進行を一時的にストップさせてM期の細胞が減少すること。
放射線障害からの回復
・亜致死障害の回復(SLD回復)
一部回復する能力を有した放射線障害(SLD)からの回復
1回照射の線量を2回に分けると細胞生存率が上昇する現象
→ 分割照射
・潜在的致死線量の回復(PLD回復)
照射後環境変化に応じて細部生存率が上昇する現象
低酸素、低pH、低栄養の細胞分裂に適さない環境下において起こりやすい
高LET放射線では起きない
・低線量率効果
0.3Gy/hより大きい線量で照射する場合、G₂ブロックが起きるため、それより低い線量で照射することで、正常組織や細胞を保護しつつ、癌細胞を確実に叩くことができる。
分割照射とα/β
正常細胞:α/β値 → 大
がん細胞:α/β値 → 小
の時に放射線治療効果が高くなる
・多分割照射
急性反応組織と晩発反応組織に差をつける。特に晩発反応組織対して副作用を極力低減できる。
具体的には、1日2回以上、照射間隔4~6時間、1回線量1.1~1.2Gyの低線量で照射
4R
4Rは分割照射における重要な要素である
➀ 回復、修復(recovery , repair)
SLD回復やPLD回復
→ 分割照射により、正常細胞とがん細胞の生存率に差をつける
➁ 再酸素化(reoxygenation)
血管周囲の酸素が豊富な細胞が死滅し、外側の低酸素細胞が血管に近づき酸素の供給を受ける
→ 2回目の照射で酸素の供給を受けた細胞が死滅する
➂ 再分布(redistribution)
細胞周期において感受性の高い時期の細胞が多く死滅する
→ G₂ブロックにより細胞が修復され、再度細胞周期がまわり始めて時間の経過とともに照射時と同様の分布に戻っていく
➃ 再生(regeneration),再増殖(repopulation)
照射を受けても生き残った細胞が増殖することでもとの細胞数に戻り、組織も元のように再生すること
温熱療法
・温熱効果
正常細胞 → 熱に反応して血流増加、43℃以上で死滅
がん細胞
→ 熱により血流増加できず、熱を貯蔵させてしまうため細胞が壊れる。42.5℃以上で死滅
・細胞周期依存性
→ S期の感受性が高い
・pH依存性
→ 低いほど効果が大きい
・温熱耐性
→ 2回目の加温では感受性が低下する
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カテゴリ:放射線の影響
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