放射線生物学:放射線作用の過程
化学的過程・生物学的過程
この記事の目次
直接作用と間接作用
・直接作用
主に高LET放射線によって起こり、放射線と標的分子が直接的に相互作用する
・間接作用
主に低LET放射線によって起こり、放射線が水と作用したときに生じるフリーラジカルと標的分子が作用する
防護剤と増感剤
・防護剤
放射線作用軽減、ラジカルスカベンジャーもその一つ、被ばく後に投与されても意味ない
・増感剤
放射線作用促進、主に酸素、照射後に酸素分圧を高めても意味ない
DNAとRNA
・DNA
4種の塩基アデニン(A)、チミン(T)、グアニン(G)、シトシン(C)とリン酸、糖からなる、ATとGCがペアでそれぞれ結合する、二重らせん構造
・RNA
4種の塩基アデニン(A)、ウラシル(U)、グアニン(G)、シトシン(C)とリン酸、糖からなる、1本鎖構造
DNAの損傷
・紫外線によるDNA損傷
チミンがピリミジン二量体を形成することで損傷
・放射線によるDNA損傷
1.塩基損傷
2.塩基の遊離
3.架橋形成→塩基間での共有結合
4.DNA鎖切断
1本鎖切断→修復されやすい
2本鎖切断→1本差切断の1/40で起こる
※頻度→塩基損傷>塩基遊離>1本鎖切断>2本鎖切断
DNA損傷の修復
・1本鎖切断の修復
光回復
ヌクレオチド除去修復
組み換え修復
・2本鎖切断の修復
非相同末端修復
切断部の再結合による修復
→全細胞周期で起こりうる
→染色体組み換えや、異なる遺伝情報など間違いがあり、完全に回復できない場合がある
相同組み換え修復
切断部の修復に用いる鋳型として同一もしくは似た配列のゲノムを利用
→S期、G₂期
→間違った修復がなく、完全に回復
増殖死と間期死
・増殖死
放射線照射後1~3回の分裂で細胞が死ぬ現象
・間期死
放射線照射により、次のM期に入ることなく細胞が死ぬ現象
アポトーシスとネクローシス
・アポトーシス
細胞内の酵素などによる能動的な死
→低LET放射線で起こりやすい
→マクロファージが関係
→クロマチン凝縮、核の断片化、細胞の縮小、アポトーシス小体
・ネクローシス
刺激による受動的な死
→高LET放射線で起こりやすい
→炎症反応細胞死
→細胞内容物の流出、核の膨潤、DNAの不規則分解
細胞の生存率曲線
○標的理論
・D₀
平均致死線量(生存率37%にするのに必要な線量)
・Dq
亜致死障害の回復(見かけの閾線量)
・n
外挿値(理論的な標的数)
○LQモデル
・αD
1本の放射線で染色体が2個所切断される確率
・βD²
複数の放射線で染色体が2個所切断される確率
・α/β
曲線の形や回復能力を決める
早期反応組織(がん等) | 晩期反応組織 | |
---|---|---|
α/β | 大 | 小 |
曲線の肩 | 小 | 大 |
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