核医学検査学:シンチグラフィ
脳血流シンチグラフィ
この記事の目次
脳血流シンチグラフィ
検査要点
脳血流SPECTは蓄積型トレーサを用いた脳血流の画像化及びマイクロスフェアモデルやコンパートメントモデル、パトラックプロットを用いた脳血流量の定量解析が行われている。Diamox負荷による脳循環予備脳の評価が行え、手術前後における脳血流の回復程度が測定できる。
- Diamox:炭酸脱水素酵素阻害薬で強力な脳血管拡張作用を有する。脳血管反応性を評価するために用いられる。利尿作用あり。アセタゾラミド製で正常脳では局所脳血流量が50~80%に増加する。
薬品の特徴
- 123I‐IMP
- 静注された後一度肺に補足され、その後緩徐に放出されて血液中から血液脳関門(BBB)を通過して脳組織に摂取される。
- 初回循環率は90%と高く、静注後早期の脳内分布は血流分布をよく反映する。
- 静注後の脳内放射能は30分後~60分後程度まではほぼ一定を示す。これは脳で取り込みと洗い出しが平行で行われいるためである。
- 収集3時間後の画像は後期像と呼ばれ、血流分布だけでなく組織内蓄積が得られる。脳梗塞などの虚血性脳血管疾患における脳組織viabilityの評価に有効。
- 99mTc‐HMPAO
- 初回循環率は70%とあまり高くはない。脳組織に取り込まれた後、血液中への逆拡散があるため脳血流と集積率の間の直線性は劣る。脳集積率は55%である。
- 静注早期では動脈血中の放射能が比較的高いため、高血流域の過小評価と低血流域の過大評価をきたす。
- 緊急検査に有用であり、超急性期脳梗塞での血流評価に適している。
- 99mTc‐ECD
- 初回循環率は55%とHMPAOよりも低いが、脳組織からの逆拡散がHMPAOより少なく、血液中の安定性が高いことから脳集積率はHMPAOと同程度となる。
以上3つの薬剤は脂溶性化合物なのでBBBを通過する。
前処理
投与前から検査後も数日間は無機ヨウ素を1日20mg以上を投与し、甲状腺ヨウ素摂取能を抑制しておく。
撮像プロトコル
- 123I‐IMP
静注後に脳内の放射能分布が安定する15分以降から撮像を開始し、20~30分間SPECT収集を行う。 - 99mTc‐HMPAO・ 99mTc‐ECD
静注後5分以降に撮像開始し、20~30分間SPECT収集を行う。 - Diamox負荷試験
投与後10~20分で最大の血管拡張効果が表れ、1時間程度効果が持続する。よってIMPのSPECTでは静注7分前、99mTc製剤SPECTでは15分前にDiamoxを15mg/kg静注する。
解析方法
- マイクロスフェア法
IMPによる5分持続動脈採決法で、採血が必要だが再現性に優れ、精度が高い。 - ARG法
IMPの脳内挙動を2 compartment modelとして解析する方法。1回の動脈採決とSPECT収集から脳血流の算出が可能。 - Patlak plot法
99mTc製剤による非採血脳血流定量法。胸部大動脈のROI設定と大脳半球のROI設定から時間放射能曲線を求めて解析を行う。
統計学的画像処理
多数例の正常解剖から制作された正常データベースと患者画像を統計学的に比較して、脳血流の低下部位や増加部位を抽出することができる。解析ツールとして3D-sspとeZISがある。
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