診療画像機器:診断用X線装置および関連機器
関連・附属機器
この記事の目次
関連・付属機器
カセッテ
主に単純X線撮影に使用されている。一般のカセッテ内部には全面と後面に増感紙が貼られており、フィルムを前後で挟み込む構造となっている。このフィルムと増感紙の密着具合が不十分な場合、光散乱によるボケが生じるため、定期的に密着性試験を行う必要がある。また、乳房撮影用カセッテには解像度を重視して後面のみに増感紙が貼られている。
カセッテの種類
- カーボンカセッテ:アルミ製より軽量かつX線透過率に優れる
- アルミニウムカセッテ
増感紙
以下に増感紙の構造を示す。
★図を挿入
一般のカセッテではX線の入射側の増感紙(フロント増感紙)とX線の射出側の増感紙(バック増感紙)の二つでフィルムを挟む構造となっている。この2つの増感紙を感光させることで感度を上昇させることができる。しかしフロント増感紙の蛍光がバック増感紙の乳剤を感光させることでボケを誘発させる、クロスオーバー効果を起こすデメリットもある。以下に増感紙感度の上昇因子を示す。
- 支持体の反射率を大きくする。
- 蛍光体の粒子径を大きくする。
- 蛍光体のX線吸収・発光効率を高くする。
- 増感紙の厚さを厚くする。ただし、厚くするほどX線の吸収が高くなり、バック増に到達するX線が少なくなる。通常の厚みはバック増感紙のほう厚い。
増感紙の種類
- 青色発光増感紙:CaWO4(タングステン酸カルシウム)蛍光体が使用され、青色発光する。この増感紙とレギュラーフィルムの組み合わせが使用されている。
- 緑色発光増感紙:Gd2O2S:Tb(テルビウム付活酸硫化ガドリニウム)蛍光体が使用され、緑色発行する。この増感紙とオルソフィルムの組み合わせが使用されている。この蛍光体の特徴はX線吸収率・発行効率が高い、高管電圧で高感度を示すなどがある。
IP
CR装置において検出器としての役割があり、広い線領域にわたってイメージングをすることが可能。以下にIPの構造を示す
★図挿入
IPの特性
- IPの蛍光体:BaFX:Eu2+(X:Cl,Br、I等のハロゲン物質)
- 感度が高いため片面のみに乳剤を塗布している。よってクロスオーバー効果は発生しない。
- 白色光を照射して情報を消すことが可能なため、繰り返し使用可能。]
- 注意点としてフェーディング現象により、照射情報が現象するため読み取りは数時間以内に行う必要がある。
FPD
被写体を透過したX線を直接電気信号に変換することで画像を出力する装置。基本的なピクセルサイズは100~200μⅿで、乳房用は50~100μⅿとされている。X線の検出方式は2パターンあり以下に示す。
- 直接変換方式:アモルファスセレン(α‐Se)半導体により、入射したX線量に比例した電荷として直接変換する。変換された電荷は各画素のコンデンサに蓄積され、TFTスイッチによって読み出しを行う。
α‐Se半導体:厚さ500~1000μⅿ - 間接変換方式:入射したX線をCsI:TlやGd2O2S:Tb等のシンチレータで光に変換し、この光をフォトダイオード(α‐Si)によって電荷に変換する。
シンチレータ:厚さ400~200μⅿ。CsI:Tlは柱状構造で蛍光による側方散乱が少ない特徴がある。Gd2O2S:Tbは発光が広がりやすい特徴がある。
直接変換方式ではシンチレータによる蛍光の側方散乱がないため、空間分解能が高い。
メリット
- I,Iのように歪みが生じない
- Dレンジが広い
- 量子検出率(DQE)が高い[60~70%]
- リアルタイムでの観察が可能
デメリット
- 金額が非常に高額
注意事項:FPDは各ピクセル間の感度均一性を保つためにキャリブレーションを行う必要がある。
- ゲイン補正:空間に均一なX線を照射し、画素の補正係数を算出して補正。
- オフセット補正:X線照射前後の画像をサブトラクションすることで補正。
グリット
被写体からの散乱X線を除去することで画像のコントラスト低減を防ぐ器具で、CRやFPDの受像面の上に設置して使用する。
構造・原理
グリッドの構造を以下に示す。
グリッドは鉛はくと中間物質がX線入射方向と平行になるように規則正しく交互に配列させた構造をしている。中間物質はアルミニウム・紙・樹脂・木材などのX線吸収の少ない物質が吸収されている。
被写体に入射したX線のうち直進するものを一次放射線といい、中間物質に入射した一次放射線はグリッドを通過し、鉛はくに入射したものは吸収される。また、体内中で一次放射線と異なる方向に進行するものを散乱線といい、一次放射線より鉛はくに吸収される割合が高くなる。
分類
以下JIS規格を参照
- 直線グリッド:X線吸収率の大きいはくと吸収率の小さい中間物質とを、それぞれのはくの長手方向に平行になるように構成したグリッド。
- 平行グリッド:吸収はくの面が互いに平行であり、X線の入射面に対して垂直なグリッド。
- 集束グリッド:吸収はくの面の延長が集束距離において一つの直線に集束するグリッド。
- クロスグリッド:2枚のグリッドを、それらのはくの方向がある角度をもつように一体に形成したグリッドで、90°直交グリッドと90°以外で交差する斜交グリッドに分類する。
性能評価
以下以下JIS規格を参照
幾何学的性能
- グリッド比 r :吸収はくdの間隔Dを1としたはくの高さhとの比
$r=$$\frac{h}{D}$ - グリッド密度 N :1cmあたりのはくの数
$N=$$\frac{1}{D+d}$ - 集束距離 f0 :鉛はくの面の延長が集束する線からグリッドの入射面までの距離
物理学的性能
- 一次放射線透過率 Tp :入射一次放射線強度Ip(グリッドなし)に対する透過一次放射線強度Ip´(グリッドあり)の線量比
$Tp=$$\frac{Ip´}{Ip}$ - 散乱放射線透過率 Ts :入射散乱放射線強度Is(グリッドなし)に対する透過散乱放射線強度Is´(グリッドなし)の線量比
$Ts=$$\frac{Is´}{Is}$ - 全放射線透過率 Tt :入射全放射線It(グリッドなし)に対する透過全放射線It´(グリッドあり)の線量比
$Tt=$$\frac{It´}{It}$<1 - 露出係数 B :全放射線透過率の逆数で、グリッド比が大きい程露出倍数は増加する。
$B=$$\frac{1}{Tt}$ - 選択度 Σ :散乱放射線透過率Tsに1対する一次放射線透過率Tpの比
$Σ=$$\frac{Tp}{Ts}$>1 - コントラスト改善比 K :全放射線透過率Ttに対する一次放射線透過率Tpの比
$K=$$\frac{Tp}{Tt}$>1 - イメージ改善係数 Q :全放射線透過率Ttに対する一次放射線透過率Tpの2乗の比
$Q=$$\frac{Tp}{Tt}$2
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