放射線計測学:計測の基礎理論
放射線の基礎
この記事の目次
放射線の基礎
放射線の分類
放射線の量と単位
量 | 単位 | 対象放射線および 定義物質 | ||
---|---|---|---|---|
名称 | 記号 | SI | 特別名称 | |
フラックス | N | s-1 | ||
エネルギーフラックス | R | W(J・s-1) | ||
フルエンス | Φ | m-2 | ||
エネルギーフルエンス | Ψ | J・m-2 | ||
フルエンス率 | Φ | m-2・s-1 | ||
エネルギーフルエンス率 | Ψ | J・m-2・s-1 | ||
断面積 | δ | m2 | b | |
質量減弱係数 | μ/ρ | m2・kg-1 | 非荷電粒子線 | |
質量エネルギー転移係数 | μtr/ρ | m2・kg-1 | 非荷電粒子線 | |
質量エネルギー吸収係数 | μen/ρ | m2・kg-1 | 非荷電粒子線 | |
質量阻止能 | S/ρ | J・m2・kg-1 | 荷電粒子線 | |
線エネルギー付与 | LΔ | J・m-1 | 荷電粒子線 | |
W値 | W | J | 荷電粒子線 | |
放射線化学収率 | G(x) | mol・J-1 | ||
吸収線量 | D | J・kg-1 | Gy | すべての放射線、物質:すべての物質 |
カーマ | K | J・kg-1 | Gy | 非荷電粒子線、 物質:すべての物質 |
シーマ | C | J・kg-1 | Gy | 一時荷電粒子線、物質:すべての物質 |
照射線量 | X | C・kg-1 | R | 光子(X線,γ線) 物質:乾燥空気 |
吸収線量率 | D | J・kg-1・s-1 | Gy・s-1 | |
カーマ率 | K | J・kg-1・s-1 | Gy・s-1 | |
シーマ率 | C | J・kg-1・s-1 | Gy・s-1 | |
照射線量率 | X | C・kg-1・s-1 | ||
放射能 | A | s-1 | Bq | |
改変定数 | λ | s-1 | ||
空気カーマ率定数 | Γδ | m2・J・kg-1 | Gy・m2・Bq-1・s-1 |
フラックス N
- 単位時間あたりの粒子の増加分
エネルギーフラックス R
- 単位時間あたりの放射エネルギーの増加分
フルエンス Φ
- 単位断面積を持つ球に入射する粒子数
エネルギーフルエンス Ψ
- 単位断面積を持つ球に入射する粒子の運動エネルギーの総和
フルエンス率 Φ
- 単位時間あたりのフルエンスの増加分
エネルギーフルエンス率 Ψ
- 単位時間あたりのエネルギーフルエンスの増加分
断面積 δ
- 1個の放射線粒子が相手の原子1個あたりに起こした相互作用の平均数
- 特別単位名称:b(バーン)=10-28m2=100fm2
質量減弱係数 μ/ρ
- 非荷電粒子が物質の単位質量あたりの相互作用によってどれくらい減弱するかを表した係数
- 相互作用:光電効果、コンプトン散乱、レイリー散乱、電子対生成
質量エネルギー転移係数 μtr/ρ
- 物質の単位質量あたりに入射してきた非荷電粒子のエネルギーのうち、相互作用によってどれくらい電子のエネルギーに変わるかという割合を表した係数
- 相互作用:光電効果、コンプトン散乱、電子対生成
質量エネルギー吸収係数 μen/ρ
- 非荷電粒子が物質の単位質量あたりに制動放射を起こす割合を補正する係数
- 診断領域X線のような低エネルギーの場合、生体物質では質量エネルギー吸収係数は質量エネルギー転移係数に等しくなる
質量阻止能 S/ρ
- 荷電粒子が物質の単位断面積を通過する際、その物質の単位質量あたりに失う平均エネルギー
線エネルギー付与 LΔ
- 荷電粒子が物質中を通過する際、単位長さあたりで電子に与えるエネルギーがΔ以下であるエネルギー損失
- L∞の場合、線衝突阻止能と等しくなる
→このことからLΔを制限された線衝突阻止能とも呼ぶ
W値 W
- 荷電粒子が気体中で1つのイオン対を作るための平均消費エネルギー
- 空気のW値=34J
放射線化学収率 G(x)
- 物質に吸収されたエネルギーあたりに生成・分解・変化して生じた物質の平均値
吸収線量 D
- 物質の単位質量当たりに放射線によって与えられた平均エネルギー
- 特別単位名称:Gy(グレイ)
- 定義式:非荷電粒子の場合 吸収線量=エネルギーフルエンス×質量エネルギー吸収係数
荷電粒子の場合 吸収線量=フルエンス×質量阻止能 - 放射線の種類や照射物質のいかなるものにも適応される
- 放射損失は含まない
- 特性X線のエネルギーは含まない
- オージェ電子のエネルギーは含む
カーマ K
- 非荷電粒子により単位質量あたりから放出されるすべての荷電粒子の初期運動エネルギーの総和
- 特別単位名称:Gy(グレイ)
- 定義式:カーマ=エネルギーフルエンス×質量エネルギー転移係数
照射線量=エネルギーフルエンス×質量エネルギー吸収係数×1/1-g - 放射損失も含む
- 特性X線のエネルギーは含まない
- オージェ電子のエネルギーは含む
シーマ C
- 単位質量当たりの物質中における電子衝突の衝突損失で、2次電子を除く荷電粒子のエネルギー損失
- 特別単位名称:Gy(グレイ)
- 入射荷電粒子にのみ適応され、それにより発生した2次荷電粒子には適応しない
照射線量 X
- 単位質量あたりの乾燥空気中で光子によって放出された陽電子・陰電子すべてが乾燥空気中で停止するまでに発生させた正負どちらかのイオンの平均全電荷の絶対値
- 特別単位名称:R(レントゲン)=2.58×10-4C・kg-1
現在では用いられてはいないが照射線量測定機器などのメータ表示がR表示のものが現在でも使用されているためこの関係は知っておく必要がある - 定義式:照射線量=エネルギーフルエンス×質量エネルギー吸収係数×e/Wair
- 放射損失は含まない
- 特性X線のエネルギーは含まない
- オージェ電子のエネルギーは含む
吸収線量率 D
- 単位時間あたりの吸収線量の増加分
カーマ率 K
- 単位時間あたりのカーマの増加分
シーマ率 C
- 単位時間あたりのシーマの増加分
照射線量率 X
- 単位時間あたりの照射線量の増加分
放射能 A
- 不安定な原子核が単位時間あたりに壊変する平均数
- 特別単位名称:Bq(ベクレル)
- 放射線壊変時する際、α線・β線・γ線などを放出するが1壊変に1個の放射線が出るとは限らない。60Coのように1壊変に2本のγ線を放出する核種もある
改変定数 λ
- ある核種が単位時間の間にそのエネルギー状態から自然の核変換の行う確率
- 放射性核種の半減期T1/2と改変定数λとの間にはλ・T1/2=ln2=0.693の関係がある
空気カーマ率定数 Γδ
- ある放射能を持つ点線源から一定距離における空気カーマ率を示したもの
- 特別単位名称を用いた単位:Gy・m2・Bq-1・s-1
A[Bq]の点線源である放射性核種からl[m]の距離における空気カーマ率Kδ[Gy/s]は空気カーマ率定数をΓδとすると次式で表される
Kδ[Gy/s]=Γδ・ A[Bq]/l[m]
この式から空気カーマ率定数の単位がGy・m2・Bq-1・s-1となることが分かる
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カテゴリ:計測の基礎理論
相互作用