診療画像機器:X線診断装置以外の診断装置
その他の撮影機器
この記事の目次
その他の撮影装置
超音波装置
撮影原理
2~15MHzの超音波を人体に照射し、異なる媒質境界での反射波を計測することで生体内軟部組織の断層像を取得することができる。
メリット
- 非侵襲的な検査を行える
- 放射線を用いないため、繰り返し検査可能
- 生体内をリアルタイムで観察可能
- 軟部組織の描出に優れる
- 小型の装置なため、可搬性に優れる
- ドプラ法により血流情報を得ることができる
デメリット
- 視野が狭い
- 解像度が低い
- 骨やガスの影響を受けやすい
超音波の特性
- 減衰:超音波が体内を伝搬すると、拡散・散乱・吸収等の影響を受けることで減衰する。また、周波数が高いほど減衰は大きいため、深部の映像化に適していない。
拡散による減衰量:距離の2乗に反比例
吸収による減衰量:減衰量 ΔP[dB]=減衰率 μ[dB/cm/MHz]×距離 L[㎝]×周波数 f[MHz] - 空気・骨は超音波が伝搬しにくい。
- 水・血液は超音波が伝搬しやすい。
- 反射・屈曲・散乱:超音波が異なる媒質境界を通過する際に生じる現象。
また、媒質境界面での反射強度は物質の音響インピーダンスの差に依存しており、その強度は音響インピーダンスの差が大きいほど大きい。
音響インピーダンス Z[kg/m2・S]=物質の密度 p[kg/m3]×物質中の音速 c[m/s]
★図を挿入 生体音速と音響インピーダンス
屈曲強度は媒質内での音速差が大きいと大きくなる。 - 超音波の指向性:超音波では前方に直進するメインローブを主に使用するが、同時にメインローブとは別の方向へ伝搬するサイドローブも発生している。このサイドローブはアーチファクトの原因となっている。
- 使用周波数:一般では3.5~5MHz、体表では7.5~10MHzが使用されている。
システム構成・特徴
以下にシステムの部品構成を示す
★図を挿入★
プローブの構成(生体から近い順に:1→2→3→4)
- 音響レンズ:超音波ビームを集束。シリコン製。
- 整合層:人体へ効率よく超音波を伝搬させる。(振動子と人体では音響インピーダンスの差が大きいため、超音波ビームが反射してしまう。そのため、整合層は人体の音響インピーダンスを有する素材でできている)
- 圧電振動子:超音波を発生させる(前方にも後方にも発生)。セラミック製。
- バッキング剤:後方に向かう超音波を吸収し、余分な振動を抑える
表示モード
- Aモード:横軸を深さ、縦軸を反射強度で表示
- Bモード:反射信号強度を輝度の明暗で表示することで断層像を表示(一般的に使用)
- Mモード:プローブと反射する対象物間の距離の時間経過を表示(心エコー図で使用)
- Dモード:ドップラー効果による周波数の偏移を解析(血行動態の解析で使用)
Dモードについて
Dモードでは赤血球からの反射波を解析し、血流の向き・流速の計算が行える。周波数f0の超音波がΘの角度で血流方向に入射した際のドップラーシフト周波数fdは次の式で示すことができる。
$fd=$$\frac{2v・f0・cosΘ}{C}$
v:血流速度 C:生体中の音速
Dモードの種類
- パルスドップラー:パルス波によって血流速度を測定。ただし、最大流速に制限がある。
- 連続波ドップラー:送受信の素子を分けて血流速度を連続的に測定。測定速度に制限がない。
- カラードップラー:プローブに近づくものを赤で表示し、遠ざかるものを青で表示する。
プローブの種類と性能
プローブの操作方式は大きく2分されており、機械(メカニカル)走査と電子走査がある。
- 機械(メカニカル)走査:超音波振動子を高速で回転させる走査方式
- 電子走査:配列させた超音波振動子を電子的に切り替える操作方式
また、振動子配列や駆動方式等でもプローブの種類があり、以下に各種類の走査方式とプローブの種類を以下に示す。
★図挿入
- リニア:一列に振動子が64~256個配列されており、プローブの幅と同等幅の断層像を取得できる
- セクタ:超音波ビームを一点から扇状に照射させることで、狭部かた深部までを幅広く観察することが可能。主に肋間走査による心臓観察のい用いられる。
- コンベックス:汎用性が高いプローブで、ビームに広がりを与えるために振動子が凸状に配列させることで深部視野が広く観察できる。腹部全般の検査に使用され、10MHz前後では体表臓器に、5MHz以下では深部臓器に用いられる。
- ラジアル:主に超音波内視鏡検査(EUS)に使用され、胃や十二指腸の検査に用いられる。ラジアル操作は内視鏡を中心に同心円状に超音波ビームを照射するため、360度の観察が可能になっている。
プローブの性能評価として分解能があり、プローブの性能に依存している。
- 距離分解能:ビーム方向の分解能。送信する超音波の周波数・パルス幅に大きく依存しており、プローブヵら送信する周波数が高く、パルス幅が短くなる程向上する。
$距離分解能=$$\frac{nλ}{2}$ n:周波数 λ:波長 nλ:パルス幅 - 方位分解能:ビーム方向に対して直角方向の分解能を指し、以下の式で表す。
$方位分解能=$$\frac{1.22×λ}{D}$ λ:波長 D:振動子経口
送信周波数を高くし、ビーム径を小さくすることで向上させることができる。ビーム径を小さくするには振動子口径が大きいものを選ぶ。 - スライス方向分解能:断層像を厚み方向の分解能を指す。音響レンズ・プローブ周波数に大きく依存し、周波数が高いほど分解能は向上する。
アーチファクト
- 多重反射:被写体を透過した超音波ビームが音響インピーダンスが異なる境界面で反射し、虚像を形成させる現象。
- 鏡面反射:被写体内を透過したビームのうち、進行方向とは違う方向のビームが反射し、鏡面像のような虚像を形成させる現象。横隔膜等の反射体が存在する臓器付近で発生する。
- 音響陰影:胆石や消化管ガスなどの超音波ビームが透過しない物質の後方に発生する陰影。
- 後方エコー増強:嚢胞等の超音波ビームが透過しやすい物質の後方に発生する帯状の陰影。
眼底写真装置
眼底検査は対外から直接血管を観察することで、眼科疾患や高血圧・糖尿病・脳卒中等の疾患の早期発見や診断を行うことができる。眼底検査は無散瞳眼底カメラと散瞳眼底カメラの2種類があり、無散瞳眼底カメラは暗室によって散瞳をさせるために、散瞳剤の点眼を必要としないため診療放射線技師が操作できるが、散瞳眼底カメラは散瞳剤を点眼させて散瞳させるため眼科医が操作する。
撮影原理
- 暗室で被験者を待機させ、自然散瞳させる。
- 撮影前に眼振の有無を確認する。
- 散瞳させた眼を赤外線(800~900nm)で内部を照明させる。
- 位置合わせとピントを合わせる。
- 可視光線(白色光)を用いて撮影を行う。
システム構成・特徴
以下に無散瞳眼底カメラの構成図を以下に示す。
★図挿入
アーチファクト
- 白い白点:涙による対物レンズの汚れが原因
- 写真全体の白化/中心に白い反射点:指紋による対物レンズの汚れ
- 写真周辺にフレアが描出:作動距離の不適正や対物レンズと被験眼の距離の不適正やコントロールレバーの押しすぎか引きすぎが原因。
- 写真の右側及び左側の欠損:眼底カメラの位置が被験眼に対して左右どちらかに寄っている。
- 写真の一部の黒抜け:散瞳不十分
- 全体的に写真が暗くなる:フラッシュの光量不足
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カテゴリ:診断用X線装置および関連機器
X線映像システム